「人新世の資本論」読了

家族に勧められて人新世の「資本論」 (集英社新書)という本を読みました。マルクスの資本論は聞いたことあるけど「人新世」ってどういう意味、そもそも読み方わからないっていうレベルの理解から読みました。この言葉の意味は本を読めば分かるとして、内容は圧巻というか、若い日本人の学者でこんなモノを書ける人がいるんだということにまず驚きました。膨大な研究から新しいアイデアを分かりやすい形で伝えるのは、読んでいる感じとしては欧米の学者が書いたモノに近いです。

読みながら思い出したのは、ちょっと前に読んだホモサピエンス全史。人類が自ら生み出した農耕技術によって逆に苦しめられているという分析は資本主義と通じるところがあります。種としてのホモサピエンスは農業革命や資本主義によってその数を膨大に増やし、それは遺伝子レベルでは繁栄したと言えるのかもしれませんが、一方で個体の幸福は損なわれさらに昨今は環境破壊によって持続可能性が脅かされるに至っています。

この本の根本にあるのは資本主義への強い批判ですが、新自由主義がキツいというのは自分も香港生活7年でけっこう身に沁みていて、全ての人に共通で必要なものを資本主義に任せるとどうなるのかというのは香港が体現しています。例えば香港ではカネがあるかないかで受けられる医療のレベルが大きく変わります。妻が1年半ほど前から使っている薬は深センでは公的医療保険の対象で、香港で同じモノを使うと10倍のコストがかかります。金持ちによる投資が集中する香港で住居が異常に高いのは知っての通り。医療や住居、水、電気、化石燃料といった生活に必要な共通の資源を資本主義に任せてはいけないというのは完全に同意します。

一方、本の中でGAFAやウーバー、Airbnbも「コモン」として共同管理すべしと書いてあって、これはイマイチどうやるのか想像も付きませんでした。従業員かユーザーが民主的に管理するとして、こういうグローバル企業は軽く数万人という従業員と何億というユーザーがいるわけで、その意見をどうまとめるのか。さらに仮に民主的に管理できたとしてもグローバル企業で働く人達が必ずしも皆環境の持続可能性を優先するわけではなく、ビジネスを伸ばして給料を増やしたいという短期的な視点で決断をする可能性も十分あります。このあたりは啓蒙活動で世論を作っていくしかないんでしょうが、コモンの民主的管理=脱成長・環境保護という風に一筋縄には行かないんじゃないかと思いました。

世界の民主主義国家が衆愚政治に陥ってしまうのを見るにあたり、それがコモンの民主的管理にも起こらないとは言えるのか。民主主義国家が自国の短期的利益のために争っているのと同じようなことが、コモンの管理においても起こり得るんじゃないか。民主的な決定をできるようになったととして、そのときに民が何を優先するかが重要で、その理解とレベルを引き上げていくことが大きな課題だと思います。

とても勉強になったと思いつつも、経済モデルの転換という大きすぎる話題の前に何が出来るのか分かりませんが、この本にある通り身の回りの出来ることからやっていくしかないのかなと思います。わたしはまさにGAFAのパートナーとして資本主義ドップリの世界で働いていて疲れるので、有機栽培とかして自給自足したいです。

 

「図解入門ビジネス 最新GDPRの仕組みと対策がよ~くわかる本」読了

ウェブサイトのデータを扱う仕事をしていて、最近クライアントからヨーロッパのデータ保護規制であるGeneral Data Protection Regulation (GDPR)について色々と質問を受けていました。会社の法務部門とか専門のチームがフランスにあるにはあるものの、コミュニケーションに時間がかかるしもうちょっと自分でも詳しく知っておくべきだと思って読んでみました。

図解入門ビジネス 最新GDPRの仕組みと対策がよ~くわかる本

正直法律の分野はそこまで興味があるわけでもなく途中で何度か飽きそうになったので、ゆっくり少しずつ読みました。これでGDPRのことは全部聞いてくれというレベルにはもちろんなりませんが、曖昧だった理解が明確になった部分もあり、全体的には良い勉強になりました。いまの会社の業務としては他社が開発したデータを収集するクラウドベースのプラットフォームを売ってサービスも提供してるので、その場合誰がデータ処理者になるのかとか特定の状況については詳しい記載はなかったですが概要を学ぶには良いと思います。

今ヨーロッパが制裁を含む厳しい規制を敷いて先陣を切ってますが、データに関するプライバシーについては今後他国も徐々に似たような基準に揃えてくるだろうという見込みなので、この業界に要る限り継続的な勉強が必要になる分野です。

「ひとりっ子の育て方」読了

ひとりっ子の娘の子育てについて書きましたが、これから2人目が出来る可能性はないことはないとしても、最初の子供は皆もともとひとりっ子ということで何か子育てのヒントでもと思って、だいぶ久しぶりに子育て本を読んでみました。

ひとりっ子の育て方~「友だちづくり力」「自分づくり力」「立ち直り力」。0~15歳児の親が最低限しておくべきこと。~

本の中では、ひとりっ子の親は「ひとりっ子だから厳しく育てないと」と思いがちですが、幼少期に厳しくしすぎるのはあまりよくなく、しつけは小学生からでも間に合うので6歳ぐらいまではしつけよりも愛情を注ぎまくることに注力した方がよいと書いてありました。これは北京で妹の姉弟を見ていて思ったことと逆。とは言ってもしつけを完全無視するわけにもいかないので、家の中での最低限のルールは作りつつ、今まで通り愛情を注ぎまくろうと思います。

それ以外にも色々と面白いことが書いてあり、特に「ひとりっ子だと寂しくないか」という疑問に対して、子供の想像力に関してはむしろ一人でいる時に発達するとか。ひとりっ子でいることのメリットとデメリットがあり、デメリットを補う方法なんかも書いてあってなかなか面白く勉強になる内容でした。今妻の実家の近くに住んでいて妹の娘なんかもよく会うので、日常的に触れ合うのが両親だけという感じでもないのはひとりっ子を育てる環境としては悪くないみたいです。

疲れたときに読む本

仕事の話。ここ2週ほど年末までにクローズしたい案件でタフな交渉が続いています。要求の多い顧客と上司の間に挟まって行ったり来たり、今年の予算への影響が大きい案件ということで絶対クローズしろよというプレッシャーもあり、ちょっとストレスフルです。疲れてついもともと少ない口数がさらに減って、家に帰ってもブスっとしてしまいがちです。こういうときは、この本を読み返すことにしてます。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」

原始仏教の教えに返って、心の反応に気づいて、仕事があって家族も元気で普通に生活できて、むしろ生きててラッキーだなぁと思うように。振り返って考えてみれば、去年の今頃は私生活が大変すぎてビジネスにストレスを感じている暇はありませんでした。そう考えると、人間余裕が出てくると逆に余計な心配を始めるもので、これこそ原始仏教が言う「渇愛(tanha) = 求めて止まない心」なのかなぁと思いました。

物事にはいくら頑張ってもダメなときはダメなこともあるし、案件が取れなくても影響はせいぜいちょっと予算達成度に対する年始のボーナスが減るかもしれないぐらいのこと。実際の経済的なダメージよりも、むしろストレスについて考えすぎることによる精神的なダメージの方が大きいです。というわけで当たって砕けろの精神で気楽に行こうと思います。

「ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論」読了

深センに引っ越してきて今家には自分用のギターと娘用の電子ピアノが並んでいて、せっかくなので自分でも久しぶりにちょっとピアノやろうかなと思っています。小学6年生以来ぶりなので無謀ながら、弾きたいのは久石譲です。が、久石譲は中期的な目標として置いておいて、短期的にはまずピアノでもギターと同じように簡単なコードを弾けるようになりたいなあと思って、Amazonで良さそうな本を見つけたので読んでみました。

ピアノでコードを覚える方法とほんの少しの理論

学生時代に一度音楽理論をかじろうかと思って本を読んでみたことがありますが、ただコードの形を丸暗記しているだけで理論の知識がない自分には難解で全く理解できませんでした。この本は基本ポップスで使われる、つまり自分にとって馴染みのあるコードを中心に書かれているのでスラスラ楽しく読めました。これからこの本を片手にちょいちょいピアノでも遊びたいと思います。Kindleアプリで読みましたが、こういう辞書的な本は本当は電子版でなく紙の本を買ってピアノの脇に置いておきたいところです。

ギター・コードを覚える方法とほんの少しの理論

ついでに同じ著者のギターコードの本も読みましたが、これまた学生時代に読みたかったです。本に出てくるコードはほぼ丸暗記に近い感じで覚えましたが、ちょっとでも理論が分かっていればもっと楽しめただろうし、苦手だったギターソロがもうちょっと出来たかもしれません。あとコード進行に関するくだりも長いことギターを弾いてても知らないことばかりで面白かったです。

「ニュクスの角灯」読みました

手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した「ニュクスの角灯」を読みました。描いた漫画家も全然知らなかったのですが、インタビュー記事を読んだら作品を読んでみたくなくなり、隔離中で暇な週末に全6巻一気に読み切りました。

アルコール依存を乗り越えてーー漫画家・高浜寛が描く、絶望と再生の物語

このあいだ初めて宮崎駿監督の「風立ちぬ」も見たんですが、明治初期から開戦にかけてという時代設定は大きく変化する時代の高揚感と同時に戦争の絶望感もあり、真反対な雰囲気が混ざり合っていて面白いです。むかし幕末から明治にかけての歴史小説をよく読んだなぁと、当時の高揚感なんかも思い出しつつ読みました。「ニュクスの角灯」めちゃくちゃ面白かったです。

作者の高浜寛は他にも歴史マンガをたくさん描いているらしいので、他の作品も読んでみようと思います。

ホモサピエンス全史(上)読みました

Amazonにおすすめされて「ホモサピエンス全史(上)」を読みました。今下巻を読んでいるところでまた読み終わってないですが、全史というだけあって広範囲の内容を扱う歴史の本ですが、深く広い分析をちょうどいい塩梅で事前知識なしで誰でも読める範囲にまとめられていて、めちゃくちゃ面白くて最初から引き込まれます。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

こういうスケールの大きい物を読んでると今猛威をふるってるコロナとか、まぁ長いホモサピエンスの歴史の中ではこういうこともあるんだろうなという気持ちになってきます。下巻は近代の宗教や経済なんかの話になり、引き続きめちゃくちゃ面白いです。

「すばらしい新世界」を読みました

なんのきっかけで手に取ったのか忘れましたが、ディストピア小説「すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)」を読みました。SF映画は結構好きなんですが、こういう小説はあまり読んだ記憶がありません。

哲学、科学、宗教、政治思想などをテーマにしているので普通の小説とは趣が違いますが、娯楽的な小説とは別の種類の面白さがありました。驚くべきは出版されたのが1932年で、80年以上も前に書かれた絶望的な未来の話なのに、全然古さを感じさせないところ。人間の普遍的なテーマを突いていると同時に、科学に関しても話の中に一切コンピュータが出てこないところを除けば、ある程度のリアルさを保っていて自然に読めました。ついでに言うと全体主義的体制とそれに対する隷従と自由という点では、香港と中国という体制の間でモメにモメている現在の香港に重なる部分もあったりしました。

ユートピア、ディストピア小説には他にも色々と名作と呼ばれる作品がありますが、今まで全然読んでこなかった分野だったので、有名どころから読んでみようと思いました。

「物語シンガポールの歴史」を読みました

学生時代に司馬遼太郎にハマったり昔から歴史はけっこう好きな方だったんですが、最近その趣味がぶりかえして世界の色んな国に関する本を読むことがマイブームです。たまたま手にとった物語 シンガポールの歴史 エリート開発主義国家の200年 (中公新書)を読んだら、ムチャクチャ面白かったです。

小さな都市国家で香港と似たような感じの国というなんとなくのイメージしかなかったシンガポールの歴史を読むと、イギリスをベースにしているという共通点はあるものの、これだけ人工的で1人の人間の思想が反映された国というのは世界でも異例で、シンガポールだけじゃなんじゃないかという気がしてきます。「国を人工的にゼロから作る」という設定のSFを読んでるような気持ちになりました。

そもそも人がほとんど住んでいないジャングルだったところから始まり今のアジアトップの経済状況にまで至ったのはものすごいことですが、それを支える政治や教育などのシステムがまた特殊で面白く、香港もシンガポールを非常に意識して色々な施策をしているそうですが、シンガポールの体制は特殊すぎてマネ出来るものじゃないなと思いました。

「苦しかったときの話をしようか」読みました

敏腕マーケターの著者が就活を控える娘のために書いた、キャリアに関するアドバイスを書いた「苦しかったときの話をしようか」という本を読みました。タイトルと内容が直感的に結びつかないですが、特に若い人にとってはとても役立つ内容だと思います。自分も就活していたときのことを思い出しながら読んでました。自分のなかに軸を持つこと、強みを自覚することは感覚的にはやってたと思いますが、しっかり言語されていて頭にスッと入ってきます。自分の娘が大きくなったら読ませたい本を発見出来ました。

で、やはり一番印象に残ったのはタイトルにもある「苦しかったときの話」。P&GのUS本社時代の話なんですが、はっきり言ってかなり壮絶です。これがグローバル企業の本社の社内政治と人間関係かと思うと、悲しいというか何というか、こんなことがあったら自分だったら絶対に簡単に折れて諦める自信があります。あとはP&G日本時代に直面した「後ろ向きの仕事」の話。自分も極小のスケールながら「このビジネスは成功しないな」と頭の片隅で思いながら仕事をしていた時期がありましたが、これは管理職でなくてもキツイものです。ビジネスの責任を負う管理職で、うまくいくと信じられない仕事を部下にやらせなければいけないというのはさらにキツイと思います。

自分としては社内政治とか言葉を聞くのもイヤだし、後ろ向きの仕事もイヤだし、やっぱり今の職場のような規模の小さい、風通しの良い組織で自分が価値を信じられるビジネスをやりたいようにやれるのが一番性に合っていると思いました。それでもたまーに後ろ向きの仕事が来ることもあるんですが、それは本書にも書かれている通りサラリーマンである限り避けられない運命なのだと思います。